【コラム】相手に取ってほしい行動を増やすには?〜目的論〜
2017.09.09
要点
・今回のテーマは目的論の説明。目的論の対義語は原因論。
・原因論とは「悪いところに注目してそこを直す」考え方、目的論とは「増えてほしいところに注目してそれを指摘する」考え方。
・まずは「相手にどうなってほしいか?」「相手のどんな行動が増えてほしいか?」を考えるのが目的論。
・人間関係で原因論をすると、険悪なムードになり生産性は高まらない。だからこそ、人間関係では目的論的な発想で関わりあうのがよい。
これまで授業の最初や最後で行なっているコーチング的な関わり方をお伝えしてきました。
今回は,授業の途中やこの教室の中にいる間すべての場面で行なっている関わり方のご紹介です。
増えてほしい行動を指摘する
それは,増えてほしい行動を指摘することです。
例えば,教室で生徒さんたちに接しているとこんなことに気づきます。
・授業の前に講師に礼儀正しく「お願いします」と生徒さんが言ってくれる
・授業後に自分が出した消しゴムのカスを集めてゴミ箱に捨ててくれる
・本棚の本をきれいに整理整頓してくれる
などです。
こうした時に,
「おっ,礼儀正しいですね」
「きれいにしてくれてありがとう」と伝えます。
他にも,苦手な教科や単元を勉強している時には、
「苦手なことにチャレンジして頑張っているね」とか,
宿題と決めた分を超えてより多くの問題を自発的に解いてきた時には、
「積極的に解いてきたね,頑張っているね」など
のように指摘します。
まずは「相手にどうなってほしいか?」を決める
これが目的論的な関わり方です。
相手(つまり生徒さん)にどうなってほしいか?をまずこちらが考えます。
礼儀正しくあったほしい,
素直であってほしい,
苦手なことでも挑戦する気持ちを持っていてほしい,
辛いことがあっても前向きに考えるようになってほしいなどです。
そういったこうなってほしいという理想の姿と合うような行動が見られた時にその行動を指摘します。
この反対が原因論的な関わり方です。
過去の記事でも書いたことがあるので今回は詳細を割愛しますが,人間関係の中で原因論的な関わり方をしてしまうと,逆にこちらが望んでいない行動が増えてしまいます。
よくあるご相談「子どもの悪いところばかりが目につく」
保護者の方とお話をしていると、
「『子どものいいところを探してください』っていうのはテレビとか本で聞いたことはあるのですが,実際には悪いところばかりに目がいって全くいいところが見つかりません」
という声を聞くことがあります。
こういったケースには「いいところを探そう」というよりも、まずは「どうなってほしいか?」をご自身の中で想像してみることから始めるとよいと思います。
相手(子どもさん)にこうなってほしいというイメージが具体的に描けたらそのあとは、自然と相手のいいところ(自分がしてほしいと思う行動)が見つかっていくはずです。
✕「いいところを探す」→○「増えてほしい行動を探す」
いいところを探すと,光りと影の関係のように,悪いところも同時に見つかります。
だから,いいところを探すのではなく,増えてほしい行動を探します。それが目的論です。
もう一度言います。相手の良いところを探すのが目的論ではありません。
意識すれば自然と見つかる
目的論の身近な事例を挙げてみましょう。
これを読まれているみなさんの中にもこんな経験はないでしょうか?
車を買い替えたいと思って「燃費がいい車、例えばハイブリッドカーを買いたいなぁ」と思ったとします。
すると街中を通っていると「最近,よくハイブリッドカーが走っている気がする」ように感じ始めます。
意識していなかった時には気づかなかったのに、意識し始めるとそのハイブリッドカーの存在が目立ち始めます。
また、折り畳み自転車がほしいと思ったとします。
すると、他の普通の自転車に乗っている人もたくさん目に入ってくるにも関わらず、折り畳み自転車に目がいってしまったりします。
ほかにも、新聞や雑誌などでも自分がアンテナを張っている記事や写真にはそこに目がいくはずです。
ダイエットや健康に関心があればその情報に目がいくでしょうし,旅行に興味があればその情報に目がいくでしょう。
こういった経験と同じように,まずは相手にどうなってほしいか?それをイメージしてみることから始めてみるといいだろうと思います。相手のいいところ(増えてほしいところ)が見つからないと思われる方は試してみてください。